この記事では、太陽光発電なしでもZEH住宅の認定を取得できるのか、またその方法について解説します。
地球温暖化が深刻化する現代において、石油や石炭などの化石燃料を必要としない省エネ住宅の需要が高まっています。これからマイホームを計画する中で、ZEH住宅という言葉を耳にする機会は多くあるでしょう。
ZEHは、「電気の供給において、火力や原子力に頼らず太陽光発電を利用して自ら創成して利用する」ことを目的とした住宅です。しかし、寒冷地や都心部ではさまざまな理由で十分な日射量が確保できず、太陽光パネルの設置に躊躇してしまう人も少なくありません。
この記事では、太陽光発電を設置しない場合のZEH認定や、ZEH住宅のメリット・デメリットなどを解説していきます。これからZEH住宅を検討する人は、この記事で解説するポイントを押さえておきましょう。
【この記事でわかること】 ●太陽光発電なしでもZEH認定は取得できる ●太陽光発電なしで認定可能なZEH住宅 ●太陽光発電あり・なしのZEH住宅比較 ●太陽光発電ありのZEH住宅が得になるケース ●太陽光発電ありの高性能なZEH住宅例 |
目次
そもそもZEH住宅とは?
ZEH住宅とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とも呼ばれ、エネルギー収支がゼロになる住宅のことです。
そもそも、ZEHの中でも細かく以下の3つに区分されます。
- ・ZEH
- ・Nearly ZEH
- ・ZEH Oriented
- 削減するエネルギー量と創出するエネルギー量の和が、消費するエネルギー量を上回り、電気代を低く抑えられる住宅として注目されています。
- 次に、ZEH住宅に認定されるための条件を見ていきましょう。
ZEH住宅に認定されるための条件
ZEH住宅に認定される条件は「省エネ性能」「創エネ性能」において、一定の基準をクリアすることです。具体的な基準は以下の通りです。
- 1.ZEH強化外皮基準を満たした上で、地域ごとの定められたUA値0.40〜0.60の条件をクリアすること
- 2.再生可能エネルギーを除き、基準一次エネルギー消費量から 20%以上削減すること
- 3.再生可能エネルギー設備を導入すること
- 4.再生可能エネルギーを加えて、基準一次エネルギー消費量からエネルギー消費量を一定以上削減すること
【強化外皮基準とは?】 強化外皮基準とは、建物の壁や断熱材などを含む外皮の断熱性能を判断する基準です。ZEHの基準として地域ごとにUA値の基準が定められています。 |
- ※参考:ZEHの定義(改定版)<戸建住宅>|資源エネルギー庁
- ZEH、Nearly ZEHは4つの条件を全て満たした住宅を指しますが、4つ目の条件における削減割合において違いがあります。
- また、ZEH Orientedは1、2の条件を満たした住宅です。断熱性能、省エネ性能、創エネ性能の条件を満たしていることで、初めてZEH住宅と認められます。
太陽光発電なしでZEH住宅の認定を取得できるのか
結論からいうと、太陽光発電システムを設置しなくても取得できる、もしくは設置要件が緩和される場合があります。
太陽光発電なしで取得、もしくは設置要件が緩和されるZEH住宅は、主に以下の通りです。
- ・ZEH Oriented
- ・Nearly ZEH
認定が受けられる理由は、日照時間の少ない多雪地域や太陽光発電を設置できない都心部狭小地に対して、太陽光発電を必要としない仕組みが制度化されているからです。
太陽光発電なしで認定可能なZEH住宅:「ZEH Oriented」
ここでは、太陽光発電なしでZEH住宅の認定が取得できるZEH Orientedについて解説します。
ZEH Orientedは、日照時間の短い都市部狭小地や多雪地域でもZEH認定が受けられることを目的として制度化されています。
<適用条件>
- ここからは、ZEH Orientedのメリット・デメリットを見ていきましょう。
ZEH Orientedのメリット
ZEH Orientedのメリットは、以下の通りです。
- ・太陽光発電なしでZEH認定される
- ・補助金が受けられる
- ・初期費用が比較的低コストで光熱費を抑えられる
認定条件である断熱性能をクリアしているので、高断熱・高気密が実現され光熱費が抑えられます。
ZEH Orientedのデメリット
ZEH Orientedのデメリットは、以下の通りです。
- ・認定を受けられるエリアが限定される
- ・太陽光発電がないため停電時に不便
- ・建築費が高くなる
- ・間取りの自由度が制限される
断熱基準をクリアするために、窓やドアの開口部の大きさが制限されます。
太陽光発電の設置要件が緩和されるZEH住宅:「Nearly ZEH」
- Nearly ZEHは、寒冷地・低日射地域・多雪地域に適用され、エネルギー削減率75〜100%を目指した住宅です。
- ZEHがエネルギー削減率100%以上が条件になっているのに対し、Nearly ZEHの認定条件は少し緩和されています。
<適用条件>
ここからは、Nearly ZEHのメリット・デメリットを見ていきましょう。
Nearly ZEHのメリット
Nearly ZEHのメリットは、以下の通りです。
- ・エネルギー削減率の認定条件が75〜100%と緩和されている
- ・補助金が受けられる
- ・光熱費を抑えられる
エネルギー削減率20%が認定条件のZEH Orientedに比べて、断熱性能が高くなっているので光熱費も抑えやすいでしょう。
Nearly ZEHのデメリット
Nearly ZEHのデメリットは、以下の通りです。
- ・基本的には太陽光発電システムの設置が必要
- ・ZEHほどの創エネは期待できない
- ・認定を受けられるエリアが限定される
Nearly ZEHは、寒冷地など日照不足による発電量が不利な地域でも認定が受けられるように、太陽光発電の要件が緩和されています。ただし、ZEH Orientedのように太陽光発電が不要というわけではありません。
太陽光発電あり・なしのZEH住宅を比較
ここでは、太陽光発電を設置する必要のあるZEHとNearly ZEH、太陽光発電を設置しなくてもよいZEH Orientedに分けて比較してみましょう。
比較するポイントは、以下の2点です。
- ・コスト
- ・エネルギー自給率
それぞれ見ていきましょう。
コスト面の比較
初期投資を比較すると以下の通りです。
<イニシャルコスト>
初期投資は、一次エネルギー削減率の条件が厳しく太陽光発電システムの設置義務もあるZEHが最も高く、普通の省エネ住宅(断熱等級3)よりも237万円ほど割高になります。
次に、年間の光熱費においてどれくらいの効果があるのか、太陽光発電システムの有無により光熱費がどれくらい変わるのかを見てみましょう。
日照時間が比較的少ない札幌市、都心部狭小エリアとして東京都23区の年間光熱費を比較します。
<ランニングコスト:年間の光熱費>
ただし、厳密には一次エネルギー削減率の条件が厳しいZEHのほうが、Nearly ZEHよりも光熱費の削減効果は高くなります。
札幌市を例にとると、一般的な省エネ住宅よりもZEHで年間18万6,000円、ZEH Orientedで9万6,000円だけ年間光熱費が削減できます。
また、太陽光発電の有無による年間光熱費の差額は約9万円であることがわかります。
エネルギー自給率の比較
ここでは、エネルギー自給率を比較していきましょう。
<エネルギー自給率の技術基準>
ZEHは、明らかに「光熱費ゼロを目指した住宅」であることがわかります。
Nealy ZEH、ZEH Orientedは、太陽光発電システムを設置しても十分な日照時間が得られないエリアや、太陽光パネルの設置が困難な都心部狭小地に対する緩和措置と理解しましょう。
太陽光発電ありのZEH住宅がお得になるケース
- 太陽光発電システムの設置によってお得になるケースは、以下の通りです。
- ・効率的に売電できるケース
- ・太陽光発電に高額な補助金が発生するケース
- ・蓄電池などの関連設備に補助金が発生するケース
- 順番に見ていきましょう。
効率的に売電できるケース
太陽光発電した電気は、固定価格で10年間買い取ってもらえます。
2024年の買取価格は1kW=16円、10年後は下がりますが買取は継続されます。2024年5月現在、九州電力の場合は7円/kWで買い取ってくれます。
現在は、九州電力や東京電力などの大手電力会社以外の新電力会社でも、高く買取ってもらえる可能性があるので、検討してみてください。
太陽光発電に高額な補助金が発生するケース
太陽光発電に対する補助金は、国と地方自治体から支給されます。ここでは、国と熊本市の場合を見ておきましょう。
- ・国:ZEH補助金として55万円/戸
- ・熊本市:太陽光発電設備として8万円/件
- ※参考1:ZEH支援事業公募要領|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
- ※参考2:令和6年度(2024年度)熊本市省エネルギー機器等導入推進事業補助金について|熊本市ホームページ
熊本市の補助金は、蓄電池との併設が支給条件になっているので注意してください。
なお、熊本市のZEH導入補助金とは併用できません。ZEH導入補助金は10万円/戸であるため、ZEH住宅の場合はZEH導入補助金を選択したほうがお得になります。
蓄電池などの関連設備に補助金が発生するケース
蓄電池に対する国の補助金制度は、2023年12月22日を持って打ち切られました。
先述した通り、熊本市では太陽光発電との併用で、8万円/件の補助金が支給されます。また、既に太陽光発電設備が設置されており、固定価格買取制度が満了した世帯が新たに蓄電池を導入するケースでも、8万円/件の補助金が支給されます。
補助金が受けられるかどうか、細かく確認しましょう。
太陽光発電ありの高性能なZEH住宅ならハイパーハウス
太陽光発電を利用して高性能な住宅を実現したい方は、ハイパーハウスをご検討ください。
ハイパーハウスの特徴の1つは、全商品が標準でZEH対応になっていることです。霧状の吹付ウレタン断熱を採用し断熱材が隙間なく密着するため、高い断熱性・気密性を確保しています。
複層の遮熱Low-Eガラスを採用することで、熱貫流率2.33w/㎡・k(一般の複層ガラス:3.49w/㎡・k)を達成しているので、冬場も快適に過ごせるでしょう。
断熱対策によって、熊本県の省エネ基準であるUA値0.87を大きく上回るUA値0.6以下、C値1.0以下を標準仕様で実現しています。
また、太陽光発電も搭載されているのもハイパーハウスの家づくりの特徴です。建物のサイズに合わせて最適な容量の太陽光発電設備を標準搭載しているので、毎月の電気代を限りなくゼロにすることが可能です。
さらに、ハイパーハウスの標準仕様である耐震等級3は、建築基準法上の一般住宅基準である耐震等級1の約1.5倍の耐震性を有しています。
柱・梁など全ての接合部に高耐圧接合金物を採用し、一般住宅で使用される短冊金物に比べて2倍の強度を実現していることも安心材料の1つです。
そのほか、自由な間取り設計や省令簡易耐火構造などが標準仕様であるため、これから新築を計画する際は、ぜひハイパーハウスをご検討ください。
ZEH住宅太陽光発電に関するよくある質問
ここでは、ZEH住宅や太陽光発電に関するよくある質問に回答します。
- ・ZEH住宅の太陽光発電の容量は何キロ?
- ・ZEH Orientedは多雪地域に適している?
- ・太陽光発電なしでZEH住宅の補助金はもらえる?
順番に見ていきましょう。
ZEH住宅の太陽光発電の容量は何キロ?
ZEH住宅の太陽光発電容量は、3〜5kWです。
仮に4kWの太陽光発電を設置した場合、年間の発電量は4,000〜5,000kWhになるので、かなりの電気量削減につながるでしょう。
ZEH Orientedは多雪地域に適している?
多雪地域において、創エネを前提しないZEH Orientedはあまり適しているとはいえません。断熱性能を上げるだけでは、消費エネルギー量の20%程度しか賄えないからです。
多雪地域においては、ZEH OrientedよりもNearly ZEHやZEHをおすすめします。
太陽光発電なしでZEH住宅の補助金はもらえる?
ZEH Orientedが対応可能な都市部狭小地や多雪地域であれば、太陽光発電なしでもZEH住宅の補助金は支給されます。
該当エリアに属さない地域では、ZEH住宅の補助金はもらえません。
ZEH住宅は太陽光発電の設置が望ましいといえる
- 政府のロードマップでは、2025年度末までに全ての新築住宅が最新の省エネ基準をクリアすることを義務化し、2030年にはその基準をZEHレベルに引き上げるとしています。
全国に先駆けて、東京都では都内の住宅メーカー50社に太陽光発電システムの設置を義務付けました。政府や地方自治体の動きを見ても、太陽光発電の設置が全国的に義務化される可能性があります。
太陽光発電やZEHを標準仕様としてブランド展開しているハイパーハウスは、時代を先取りした住宅メーカーです。これからマイホームを計画される方は、ぜひお近くのモデルハウスに足を運んでみてください。